nowadays dub Vol.7

「dub」とは「吹き替えのせりふを入れる」という意味があるそうです。
takumi apartment管理人がここで起こっていることにセリフをつけるように勝手に感想を綴るコラム「nowadays dub」。
Vol.7は建物の中にあり壁や建物に囲まれた屋根のないスペース「中庭」とnowadays bistro dub plate menuについて。

【中庭】

壁や建物に囲まれた屋根のないスペースという意味での中庭は、人類が住居を建設するようになったころから建築に取り入れられていた。中庭のある住居はイランや中国で紀元前3000年ごろには既に存在した。中庭は外界から守られていながら、完璧な内部空間ではないという特徴を有し、穏やかな外部空間として、調理場、寝床、仕事場、遊び場、庭園、動物を飼う場所など、さまざまな活動の場に利用されてきた。
古くから各国で見られ、古代ローマの都市住宅には、アトリウムとペリスティリウムという公私2つの中庭があったことが知られている。中庭が生まれる以前、家の中心で焚き火を燃やし続けるために天井に煙を逃がす小さな穴を開けていた。この小さな開口部が時と共に大きくなっていき、今日見られるような屋根のない中庭へと発展した。中庭のある住居は世界中で設計され建設されており、時代ごとに様々なバリエーションが存在する。
中庭のある住居はどちらかと言うと温暖な気候に適しており、中央の中庭が住居を冷却する重要な役目を果たしている。ただし、何世紀も前からより厳しい気候の場所でも中庭のある住居が建てられている。中庭は、換気、採光、プライバシー、セキュリティ、静けさといった住居に一般的に求められる特徴を提供してくれる。
takumi apartmentにも大小様々な中庭が5つ存在している。一つはoffice兼住居の中央、二つ目はofficeと蔵アパートとの境、三つ目はbistro dub plateに隣接する共有スペース、四つ目はアパートのエントランス、五つ目は蔵テナントが占有できる中庭である。それぞれの中庭には五種五様の特徴があり、土地の境界や共有スペース、遊び場、物干し、洗い場などの様々な役割を果たしている。takumiの中庭は170年に渡って今もなお手を入れながら日本家屋独自の絶妙なバランスで配置されているように思う。町家というと建築物に目が行きがちだが、日本文化、彦根文化を残す意味では、この絶妙な余白についても後世へ伝えていく必要があるのではないだろうか。
私がここに来た際は、そのすべての中庭が荒れ果ててしまっていたように思う。現在は少しづつ手を加え、中庭の体を成すようになった。当たり前のように生活や営みに溶け込み、荒れ果てていた状態を思い出すことも久しい。整えるのにはお金も時間も少なからず必要だが、この土地にいい風を通すためには必要なことだろう。
今宵も少しづつ良い風が通るようになった中庭を眺めながら、一服嗜みたい。

 

【オマール海老のビスク】
もうお正月も過ぎてしまったが昨年のクリスマスメニューから最も印象に残ったひと品を振り返る。クリスマスの特別メニューなので常時アラカルトで楽しむことは出来ないことを口添えておきたい。
今回も全ての料理が絶品だったことは言うまでもないが、中でもスペシャリティを感じざる負えなかったのがこの「オマール海老のビスク」だ。ビスク(Bisque)とは、クリームベースの滑らかで濃厚な味わいのフランス料理のスープである。本来は裏漉しした甲殻類のクーリをベースとして作られる。ロブスター、カニ、エビ、ザリガニ等が用いられることが多い。今回はビスクの中でも「オマール海老」を贅沢に使った一品だった。その濃厚で旨味の凝縮されたスープの真ん中にオマールの真薯(しんじょ)が浮かんでいる。真薯とは日本料理のひとつでエビ、カニ、魚の白身などをすりつぶしたものに、山芋や卵白、だし汁などを加えて味をつけ、蒸したり、ゆでたり、揚げたりして調理したものだ。またその真薯もオマールの濃厚な旨味が詰まっている。かといって全くしつこいことはなく、シェフのやさしさでうまく包まれている味わいだ。なんとも至福のサプライズな一品であった。
dub plateのコースはクリスマスでなくともうれしいサプライズのエッセンスがあるのもうれしい。その時その時の仕入れで変わるメニューを楽しみに外食のローテーションに入れてみてはいかがだろう。

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